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情報保存Q&A 13.写真(フィルム)の保存

Q1 フィルムはなぜ劣化するのですか?
私たちの身の回りにあるもの全てに当てはまりますが、物体は時間と共に少しずつ劣化していきます。このような劣化は、空気中にあるさまざまなガス、温度や湿度、光線などによる影響や物理的な影響など様々な要因が複雑に絡み合い発生していると考えられます。 フィルムも例外ではなく、フィルムを構成するそれぞれの材料が時間と共に劣化していきます。フィルムを構成する材料は、乳剤層にゼラチン、フィルムベースは酢酸セルロースやポリエステルが用いられています。ゼラチンはタンパク質なので高温多湿の環境ではバクテリア等の微生物に冒されたり、カビの発生により菌糸が乳剤層に入り込んだりして劣化することがあります。また、ベースや画像を形成している銀や色素もそれぞれの材質特有の劣化が進み画像が失われていきます。
Q2 フィルムの劣化にはどんな種類がありますか?
フィルムの典型的な劣化現象として、モノクロフィルムの銀画像に起こる硫化や酸化、カラーフィルムの発色色素の退色による劣化があります。硫化や酸化はモノクロ画像を形成している銀画像が大気中のガスと反応を起こし発生します。退色はカラー画像を形成しているイエロー、マゼンタ、シアンの3種類の色素の劣化により発生します。光が当たることにより色素が劣化する退色を明退色、光以外の要因で起こる退色を暗退色と呼び、退色の進行は保存環境に大きく影響されます。それぞれの退色の特徴として、明退色はマゼンタ色素の劣化が促進され、青っぽく全体にコントラストのない画像になることが多く、また、暗退色はシアン色素とイエロー色素の劣化が促進され、赤っぽい画像になりやすいとされています。 このほかに、フィルムベース(酢酸セルロース:TACベース)が引き起こす加水分解や現像処理の残留薬品による劣化、取り扱いの不注意による指紋や汚れが引き起こす劣化、傷などの物理的な劣化にも十分な注意が必要です。
Q3 フィルムの劣化を防ぐには?
現在の技術では、フィルムの劣化を完全に防ぐことはできません。しかし、劣化の度合いを最低限に抑えフィルムを延命させることは可能です。 光や高温高湿な環境はフィルムを劣化、変退色させる原因となりますので、フィルムの保存には通気性の良い、乾燥した冷暗所が適しています。また、カビの発生を抑えるためには、写真用の抗カビ剤や湿度調整シートを用いたり、保存性を考えた専用のアーカイバル包材を用いたりすることも効果的です。フィルムを取り扱う際には、指紋、汚れや傷などを付けないよう十分な注意が必要です。指紋や汚れが見つかった場合は、そのまま放置するとカビを誘発させるおそれがあるので、速やかに適切なクリーニング処置を行うことが必要です。 退色が進行したフィルムでもあきらめることはありません。デジタル技術により修復が可能な場合があります。しかし原本であるフィルムの重要性は変わりませんのでフィルムの適切な保存処置(JIS K 7641)が重要です。
(文責 会員企業 竃x内カラー)

 

 


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